一方的な情報に踊るマスコミとそれを演出する陰謀集団
コスモメイト訴訟劇にみる原告たちの「正体」


昨年十二月三日、地方紙・神奈川新聞の朝刊社会面に「コスモメイト・セクハラ訴訟――慰謝料1100万円で和解」という四段見出しが踊った。コスモメイトといえば、本誌が昨年六月号と七月号で報道した「コスモメイト攻撃の背景と黒い人脈」の舞台となった神道系の宗教団体である。そのコスモメイトにその後、一体何があったのか、そして神奈川新聞は真実を伝えているのか、その背景と真相を洗ってみた。



”不可解な神奈川新聞の報道”

 神奈川新聞はこう伝えている。「霊界をテーマにした著述、講演活動で知られる深見青山が主催する神道系宗教組織コスモメイトの元職員の女性二人が『深見氏からセクシャルハラスメント(性的嫌がらせ)を受けた』として、同氏に計一千万円の慰謝料の支払いと謝罪広告を求めた民事訴訟が二日までに横浜地裁で和解した。関係者の話では、深見氏側が請求金額を上回る一千百万円を支払って決着したという。
 訴えていたのは、横浜市内などに在住の二十八歳の女性と三十一歳の女性。二人は、深見氏にマッサージを命じられるなどした際に強引に引き倒され、胸などを触られたとしており、さらに事態発覚を恐れた深見氏から「キツネつき」などと誹謗中傷を受け『人格的な尊厳や働く権利を侵害され、著しい精神的苦痛を被った』と主張していた。
 深見氏は『強運』『愛の守護霊』などの著書があり、ラジオのパーソナリティーとしても活躍した。株式会社コスモメイト、ファッション時計の三十鈴、進学塾、出版社など系列グループの事実上のトップとされる。
 セクハラ事件をめぐっては、深見氏に反発して解雇された男性職員ら十七名も地位保全の仮処分を求めて東京地裁に提訴していたが、こちらもすでにコスモメイト側が六千万円の解決金を支払うことで和解している。
 正確を期するために全文を紹介したが、社会面四段にわたるこの記事、その量といい、その表現といい、いささか常軌を逸してはないか。新聞界に詳しいあるジャーナリストは、紙面を前にしてこう分析した。
「他に詳しく報道すべき事件がなかったわけじゃないのだから、確かに異例の扱いですよね。まあ、元より神奈川新聞は偏向しているというのが業界の一般的評価ですから、なんとなく裏が見えますけどね」
 裏とは何か。この記事が出ることによって利を得るサイドが、神奈川新聞とつながっているとなるのだろうが、それでも記事が真実を伝えているのなら報道姿勢にとやかくケチをつける筋合いではない。
「記事を読んで気になる所が何か所かあります。なぜ、請求額を上回る金額が支払われたのか、地位保全の仮処分問題がなぜセクハラ問題をめぐってなのか・・・・・・」(前出ジャーナリスト)
 原告側の請求額上回る金が支払われたとすれば、訴えられた深見氏側の腹の内が知りたくなる。また、セクハラ問題と解雇という労働問題がどう絡んでいるのか説明して欲しいもの。その点について記述がなければ、“欠陥記事”のそしりは免れまい。
 ある新聞記者はいう。
「新聞側にある種の意志があったにしても、訴えられた側のコメントが入れば何となくバランスの取れた記事になるものなんですけどね。その取材をしなかったのか、それともコスモメイト側が取材を拒否したのか、どちらかでしょう」
 偏向という評価はあっても、一応名の通った新聞、ヨタ新聞とは違うのだから取材のイロハは知っているはずだ。とすればコスモメイト側の対応に問題があるのではないのか。早速、コスモメイト広報室に取材を申し込んだところ、「その件については一切お話できません」と取材拒否だ。やっぱりそういうことかも思いつつも、どこかおかしい。一切の弁明なしの取材拒否というのは、コスモメイト側に記事以上の問題があるなかも知れない。そのあたりを念頭に置きながら取材を進めていく中で、ようやくその理由が明らかになった。




”裏があった“セクハラ訴訟”

 きわめて信頼できる司法筋によると、問題の女性二人と深見氏側が“和解”したのは裁判長(裁判所)の強い勧進によるものだというのである。また、両者は“和解”するに当たり裁判長の指示の下に4点から成る「解決調書」を取り交わしているという。その内容は、

@、深見氏側が解決金としてお金を支払う
A、ただし、謝罪文、謝罪報告などの他の請求は一切認めない
B、裁判費用は双方それぞれが支払う
C、当事者同士と弁護士は、解決内容について何人に対しても一切、公表はもちろん、口外もしないこと――というもの。
 コスモメイト側がかたくなに沈黙を守っている理由はここにあったのだ。とすれば、神奈川新聞(毎日、スポーツ紙などもベタ記事で紹介)に情報が漏れたとすれば、漏らしたのは誰なのだろうか、自明の理というものだろう。
 では、伝えられるセクハラとは一体何なのだろうか。コスモメイトの内情に精通し、深見氏を知る元幹部スタッフはこう語る。
「ああ、あのセクハラ騒動? あれは、OとYという二人の元スタッフが深見さんから体を触られたといって損害賠償を横浜地裁に提唱していたものですが、その現場を目撃した人は誰もおらず、時刻も特定できない。提訴を受けた横浜地裁としても相当困ったはずですよ」
 だから、横浜地裁は和解を勧進し、和解金ではなく解決金として千百万円を支払うことで手を打たせたというわけだが、同元幹部氏はさらにこう続ける。
「実は、あのセクハラ訴訟には裏があるのですよ。つまり、Mという元幹部の分派活動の一環としてセクハラ訴訟が行われたわけです。その観点に立てば、自ら事件の全体がハッキリしてきます」
 ここに登場するMという人物は、本誌が昨年二回にわたって報道した通り、コスモメイトの教祖深見青山氏の信用失墜を画策し、公然と分派活動を展開した一連の騒動の黒幕である。
 Mは、コスモメイト在職中から自分の息のかかったスタッフを飲み屋やスナックに連れていっては、深見さんの悪口をあることないこといいふらしていました。その中にはいつもOとYさんがいて、一緒になって深見さんの悪口を言っていたんですよ。そういう光景は私だけでなく、何人ものスタッフが目撃しています。」
 OとYがセクハラを受けたとして訴訟を起こしたのも、Mの陰謀と密着に連動しているのは間違いありません」(前出の元コスモメイト幹部)




“陰謀集団”罠にはまった教団”

 M氏は何を目的に分派活動を展開したのか。
「要するに教団の乗っ取り。いくつかの教団を渡り歩きながら、ガードの甘い教団を捜していた。その時、急成長を続けていたコスモメイトに出会って、千載一遇のチャンスと思ったのでしょうね。言葉巧みに教団の主催者である深見さんや教祖とされる橘カオルさんに近づいた」(コスモメイトに詳しいジャーナリスト)
 この時、橘教祖は「あの人は駄目よ」毛嫌いしたらしいが、深見さんは鷹揚というか、来るもの拒まずという姿勢の人だから、まあいいか、と幹部に据えてしまった」(前出のジャーナリスト)
 有力会員はこうもいう。
「全てが神の意志に基づく“神社組”として捉えていますから、内部に妙な人間がいても、これまた神の御意志と考える。現場のスタッフは歯がゆい思いをしたようですが、逆にいえば、この神に対する崇敬の念がコスモメイトの魅力なんですよ」
 M氏はまんまとそこにつけいったというわけだ。身長百六十センチほど、どういうわけか左手の小指の先がないこの人物の武器は、あのダウンタウンのハマちゃんに似た笑顔と弁舌の巧みさ。組織拡大の前線司令官とマスコミ担当を兼務、教団内で地歩を築きつつ乗っ取りを謀るとはなかなかのタマだが、やがてその正体が暴かれる時がきた。
左の私信をうかつにも支部の一室に残すというドジを踏んだのである。

「丘叡大人
M拝
 組合が立ち上がり、女性陣の立ち上がりまで時間をつなげる予定です。何から何までお世話になりますが、今後ともご指導賜わりますよう改めてお願い申し上げます。またご連絡します。」(本誌平成5年7月号)
 
 丘叡なる人物は定かではないが、前後関係からマスコミ関係者と読みとれる。要するに、マスコミにコスモメイトにまつわる悪評を売り込み組織を攪乱、自らは一派の首魁となるという魂胆。
 この陰謀を知った教団はM氏を訪問、辞職に追いやり、同時にM氏を信奉する連中の解雇に踏み切ったが、これがとんだ罠にはまる結果となった。
 「この時、スタッフ(従業員)の中で仕事をしない連中も一緒にやめさせたのが大失敗。M派と怠業癖のある連中が手を組み組合を結成、連合の下部組織に支援を依頼した」(有力会員)
 
 結果は神奈川新聞記事の後段にあるとおり、教団はまんまと六千万円に及ぶ解決金を払わされる羽目になってしまったのだ。
 当時を振り返って幹部会員はいう。
 「深見さんは『いいよ、いいよ、これで彼らの再就職がスムーズにいけばいいんだから』といっていました。そんな人の好いことでどうするとは思ったんですがねえ」
 そして、お人よしのツケが回ってきた。M氏の丘叡氏に対する私言の中にある「女性陣の立ち上がり」が今回報道されたセクハラ訴訟である。
 「Mさんは自分の周りに親衛隊あるいはハーレムのようなものを形成していた。セクハラの原告、OとYがハーレムに属していたかは不明だが、少なくともYにはMさんに対して結婚願望があった。そのことは会員内で衆知の事実。したがって、彼女たちを操ることはきわめて容易でしょうよ」(事情を知るスタッフ)
 さすがハマちゃんいやM氏。一昨年、御歳50歳にして29歳の女性(Yとは別人)と結婚。それも六度目の結婚というのだから、あやかりたいものだが、「その新婚家族をほっぽって、他の女性と潜行中」との情報もある。いや、潜行ではない。現在彼は、イオン水製造器の実演販売のため、各地のスーパーに出没しているのを目撃されている。
 「それも、コスモメイト本部に近いスーパーにいたりするんですから何を考えているのやら」(目撃したコスモメイト関係者)




”訴訟内容を全面否定した深見氏”

 下世話な話はひとまず置こう。
 司法筋によると、深見氏は訴訟内容そのものについて全面否定したという。
「深見さんの性格からして、少しでもやましいところがあれば全部否定はできない。いわゆるセクハラの事実もなかったし、訴訟そのものの動機と目的は嫌がらせとお金目当てと見て間違いないな」(OとY両嬢を知る元コスモメイトスタッフ)
 ではなぜ、深見氏側は横浜地裁の勧進に応じてなおかつ請求額より多い解決金を支払ったのか。コスモメイトと宗教家・深見氏を知るジャーナリストの一人は、こう解説する。
「あれは慰謝料じゃなくて、まったく別の意味があると私は見ている。深見青山という人物は既存の宗教家の中ではユニークな存在で、なによりまず相手の事を第一に考える。原告二人の女性を考え、さらに経済事情を考え、相手方の弁護費用分として解決金を支払ったのでしょう」
 また、深見氏を知るコスモメイトの元幹部と元スタッフはこう証言する。
「深見さんは常日頃『ボクはあくまで宗教的な道を行く。その宗教的な道とは愛情と真心である』と言っていますからね。今回のセクハラ訴訟では、それを実践したんでしょう。一般の人間はなかなか理解ができないことですが、たとえ金銭的には損失となっても、宗教的な道を選択するというのが深見青山の宗教家としての良さなんですよ」
 一方セクハラ訴訟と連動したといわれる「労働問題」のその後はどうなったのか。コスモメイトの内情に詳しいジャーナリストはこう語る。
「組合を結成した連中は、コスモメイトの本部のあるJR西荻窪の駅でビラを撒いたり支部に怪文書を流したり無言電話をかけたりと、嫌がらせのし放題。そのため、コスモメイトはかなりの多数の会員が辞めるなど、痛手を被ったということです。だから、組織を守る立場にある深見さんは腹わたの煮えくり返る思いをしたはずです。しかし、深見さんは彼らに解決金を支払って、これから先、社会で活躍できるようにと配慮してやった。連中にその意が通じたかどうかはわかりませんが、大半は何がしかの金と次の職を得たようです。中には敵であるはずのコスモメイトのスタッフから再就職の便宜を計ってもらった人もいるようです。」
 いい加減といえばいい加減だが、そこが信仰のいいところかもしれない。しかし、その中で依怙地に頑張る者もいる。
「きわめて真面目な男ですけどね。彼が深く関わっているのはM氏とは別の思いからだと思いますよ。ただ、結果としてM氏の策謀を利している点はいただけない。自分の信ずる宗教の道があるならそちらに行けば済むことです。そうできないのは、迷いの世界にどっぷりはまってしまっているからでしょう」
 本来、宗教とは人に希望の光を与えるものであろう。その光を見つけ出そうとしない信仰人は暗闇の中でのたうつのみ。
 それにしても、いくつかのマスコミがさしたる根拠もなく反コスモメイト・グループに乗せられてきたことは誠に嘆かわしいことである。宗教ジャーナリストの一人は、こう言う。「最初にセクハラ騒動を記事に取り上げた週刊新潮は、編集部機能の弱体化が噂されている。コスモメイトの資産問題にイチャモンをつけたのはサンデー毎日だが、彼らにはもっとやるべきことがある。その第一が創価学会との癒着の問題だと思うけどね。まあ、毎日そのものが経営不振で、毎日新聞新新社という名称の新会社を設立し、旧会社に負債を清算させなければならないほどだというから、ダボハゼみたいに売り込みネタに飛びつくのも無理はないけどね」
 そして今回の神奈川新聞。
 一方的情報に与するのは、マスコミの自壊現象であることを心して欲しいものだ。
(了)



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