サンデー毎日に見る
コスモメイト攻撃の背景と”黒い人脈” (上)


 まず、四月十八日号の記事だが、「激震スクープ――セクハラ、暴力、霊視商法――丸秘フロッピーに封印されていた――摩訶不思議教団――コスモメイト深見青山教祖の“行状”」という、いかにも読者の関心を引きそうなタイトルのもと、コスモメイトの深見青山教祖がどれほどに悪辣な人物であるかを伝える記事仕立てになっている。これを、コスモメイトの内部事情をしらない一般読者が読めば、「またまたとんでもない教祖が現れたものだ」と思うのは必定。それほどに、刺激的な内容なのだ。
 では、この『サンデー毎日』四月十八日号に書かれているとことは本当に事実なのか。事実としたら、コスモメイトという組織および深見青山教祖は社会的に糾弾されてしかるべきだが、冷静な判断力をもつ読者の目には、かなりいかがわしく、信用できない記事に思えたはずだ。というのも、どこをどう読んでも、情報源が偏りすぎている上、悪意に満ちた表現が多すぎるからだ。




“教祖乱入事件”の真相

 そもそも、この記事がいかに一方的な情報源をもとに書かれたものであるかは、次の一文からも明らかである。
 <ここに一枚のフロッピーディスクがある。「鬼瓦権太夫」と名乗る人物らが日常生活をレポートふうにつづったもので、それぞれにタイトルがついている。まずはその一つ、「体験レポートポチ(深見青山氏を指す――編集部注)、秘書室で大暴れ!」を読んでみると――。>
「鬼瓦権太夫」というふざけた名をかたる人物らが、『サンデー毎日』にフロッピーディスクを持ち込んだであろうことが容易にうかがわれる。少し長くなるが引用する。
<平成四年夜十時過ぎ、ポチが秘書室に出現した(略)、この時、ポチが持参したのは、ナタ、斧、巨大な小槌の3点セットである。ポチはスタッフの引出しをことごとく引き抜き、中の書類などすべてを床の上にばらまいた。(略)斧をおもむろに取り出し、机という机を叩き壊し始めた。信じがたい光景。この世の地獄である。ポチは最後には何をするのかわからない奴だ。これで人間の頭をかち割るなど屁とも思わない。(略)逆上すると絶対に無差別攻撃にでるであろう、と空恐ろしく感じた。(略)ポチは、
「今度は日中に来て全部カチ割ってやるからなー」と言い残して出ていった。後に残された悲惨な秘書室。一体、御神業とは何なのだろうか・・・>
 『サンデー毎日』は、このフロッピーディスクを持ち込んできた人物を完全に信用してしまったのだろうか。裏づけ取材もせずに、深見青山氏がこういう暴力を振るったと断定している。では、ここに出て来る話は事実なのか、それとも事実無根なのか。コスモメイトと取材すると、意外な事実が判明した。
 「あの記事は、部分的な現象だけを拡大して深見先生を悪者に仕立ているんです。真相は違うんです。コスモメイトの秘書室には、10人のスタッフがいるのですが、それぞれ独自に動いたりして相互の連絡がうまくいってなかった。そのため、会員の方などからクレームがあったり、総務部との間に事務上のトラブルが生じたんです。それで、深見先生が『だったらテーブルをラウンド形にすればいい。そうすれば、相互のコミュニュケーションが良くなるから問題は解決する。多少費用がかかってもいいから早速変えなさい』と再三注意していたんです。
 これは、あのフロッピーの文章を書いた人間も知っていたことですよ。ところが、再三注意されていたのにもかかわらずなかなか実行しなかったため業を煮やした深見先生が一計を案じ、あらかじめ幹部スタッフと計らって多少大袈裟に芝居を打ったというのが真相なのです」
 その真相を隠して、あたかも深見氏が発狂して暴力を振るったかのようにフロッピーディスクを作成して、マスコミに持ち込んだというのである。
 この話が事実だとすると、問題のフロッピーに書き込まれた文章は、単に日常の出来事を日記ふうにつづったものでなく、ある明確な意図のもとに書かれたということになる。すなわち、深見青山氏の信用失墜、これこそがフロッピー文章のねらいだったのだ。




影の首謀者は、X氏!?

では、深見青山氏の信用失墜を図ったのは、フロッピーを作成した当人だけなのであろうか。われわれ取材班がコスモメイト周辺を取材した結果、一人の人物に行き当たった。
 この人物を仮にX氏としておこう。
昭和十七年生まれで、今年五十一歳。三回の離婚歴があり、現在の戸籍上の妻は四人目というなかなかの艶福家であるが、このX氏が今回の騒動の影の中心人物であるのは間違いないようだ。
 X氏がコスモメイトのスタッフになったのは昭和六十二年。以来、着実に内部での地歩を固めて、数年前から教祖に次ぐナンバー2に昇格。
同時に対外的にはコスモメイトのスポークスマンとしての役割を果たしてきた。そのX氏がコスモメイトの乗っ取りを画策、これに失敗して同調者十人とともに教団から離脱し、マスコミを利用して内部攪乱を図っているというのである。
 そのへん事情について、コスモメイト内部事情に詳しい元スタッフのH氏はこういう。
「『サンデー毎日』の記事?ああ読みましたよ。でも、あまり信用できませんね。セクハラや暴力があったかどうか、私にはわかりませんが、一読して、『サンデー毎日』は利用されたなと思いましたよ。この一件の本質はどの宗教団体にもある分派騒ぎですよ。前々から内部で勢力を伸ばしていた分派志向派が、折から降って湧いたセクハラ騒動を格好の材料として騒ぎたてた。ところがそのことによって逆に、謀反の意があるということで追放された連中が腹いせにマスコミにあることないことをリークした。ただそれだけのことですよ」
 また、元スタッフT氏は分派活動の首謀者は、X氏であると断定する。
「Xさんは良くいえば器が大きいんでしょうが、もともとナンバー2で収まっているようなタイプではなく、自分がトップにならなければ気がすすまない人。だから、ある時期から完全に深見さんを見限ったんですよ。それは、あの人と接触したことのあるひとならわかったはずです。言葉の端々に『あれっ?この人、腹の中で何を考えているんだろう』と感じさせることがたびたびありましたからね」
 ナンバー2がナンバー1を見限る。まあ、それだけの話ならどこの組織にもよくあることで、決して珍しいことではない。
「ところが、見限ったのだったら辞めればいいのに、Xさんは内部に自分の派閥をつくろうとした。若いスタッフや会員を集めては『深見のいっていることは全部デタラメだ。あれは大本教の何々という文献に全部載っていることで、あいつのオリジナルじゃないんだ。深見は偽者だ』と“オルグ”していましたからね」。そういう人物はなぜ、コスモメイトではナンバー2に置いたのだろうか。
「それは深見さんがXさんを信頼していたからですよ。信頼していたからこそ金銭的にも厚遇し、マスコミ担当という宗教団体にとっては重要なポジションに就かせていたんだと思いますよ」
T氏のいうとおり、コスモメイトを離脱する寸前までX氏がマスコミ担当として活動していたことは事実である。そのマスコミ担当がマスコミにリークしたというのだが笑い話になってしまうが、ある関係者によると、
「リークしたのは辞めてからじゃないんですよ。在籍中から反深見派としてマスコミと接触していたはずです」
 しかも、その証拠を残したままいなくなってしまったというのだから、ますます間の抜けた話になってくる。
「Xさんの言動がおかしい、と感じていた人はいっぱいいたはずですが、その人たちも口にはだせなかった。なぜなら、Xさんは大幹部だったし、それより何より深見さんはXさんを信頼していましたからね。そういう状況で幹部批判なんかできませんからね。まあ、早い話、深見さんが世俗のことにうとかったということでしょう」(前出H氏)
 さらにコスモメイト側やコスモメイトの元スタッフ、元秘書などの証言を拾い集めると、X氏がなかなかの野心家であることが明白になる。
「コスモメイトを自分の思うようにしようという不純な動機を抱いて動いていた。こんな表現をしたくないが、乗っ取りを画策していたんです」(元秘書)
 野心家であるだけなら別にどうってことない。問題はX氏が内部を攪乱するためにウソの情報を流したかどうかどうかである。そこで、事実関係を調べていくと、かなりの部分でウソが発覚したのだ。




問題のフロッピ―は深見氏失脚が狙い

 これまでの取材で、問題のフロッピーは、X氏につながるA子(28)、B男(26)、C男(24)の3人の秘書室のスタッフがX氏の指示のもとに作成し、これまた間の抜けたことに、作成したフロッピーをパソコンに入れっぱなしにしていたために他のスタッフによって発見され、反深見派の存在とその動きが露見したことが明らかになっている、コスモメイト側の説明によると、
「三名はフロッピーの存在が発覚した際、いたたまれなくなって自分たちから退職届を出して辞めたのです。その際、他のフロッピーも相当持ち出しています。現在、弁護士を通じて返却を要求しているところです」(コスモメイト広報室)
 三人はフロッピーディスクの中身がバレた直後の今年一月二十九日に退職している。
 また『サンデー毎日』四月十八日号の記事の中に登場する元スタッフや元会員、あるいはコメントを寄せている「女性信者」もすべてX氏グループの人間であることがその後取材で判明している。
 登場人物が判で押したようにコスモメイトと深見氏を一方的に非難していることからも、背後にX氏グループらの仕掛け、シナリオがあることは明確である。




何ともお粗末な特集記事

このように、深見青山氏の信用を失墜させようとするX氏とその周辺グループの意図と思惑を知ってか知らずか『サンデー毎日』は、フロッピーディスクの中身が事実か否かの裏付け取材をしないまま、次のように断定しているのである。
 <(前出の体験レポートの続き)最初は野良犬でも暴れたのかと思っていたが、まるで暴力団の殴り込みのようである。
 だが、このポチと呼ばれる男、実は今、若者の間に人気上昇中の新興宗教団体『コスモメイト』の深見青山教祖だったのだ>
 山の中じゃあるまいし、今どき、野犬が暴れまわるだろうか。こんな稚拙な表現のレポートを鵜呑みにして記事を作成した編集部の責任は大きい。コスモメイト側によると、『サンデー毎日』(4月18日号)の記事にはわかっているだけでも約三〇ヶ所にわたって事実無根、事実誤認があるという。たとえば、写真説明にある「仏画を入手するには一〇万円〜三〇〇万円の玉串が必要」という部分はまったくのデタラメという。
「なんでこんな価格が勝手につけられるのか。仏画は九頭龍師、救霊師のためのもので非売品、無料です。発売用の仏画は二千円と三千円で、例外的に高いものでも三三〇〇円ですよ。あの記事はちょっとひどすぎます。内部の会合で、深見先生が発言していないことまで先生の発言とされているのですから」(同広報室)
 コスモメイト側は現在『サンデー毎日』編集部に対して文章で抗議、訂正要求を申し入れ、「場合によっては法的措置をとることもある」(同広報室)としている。
 ところで、『サンデー毎日』のコスモメイト批判特集の背景には、先に指摘したX氏とそのグループが深く関与していると見られるが、同グループはその後も積極的にマスコミに接触、内部資料などを提供しながらコスモメイトへの攻撃を続けているという。当然のことながら、X氏らのグループからマスコミに提供される情報は、コスモメイトと深見青山氏を中傷する悪意に満ちた内容となっている。ここで問題なのは、X氏らのグループの、歪曲、虚偽の情報を一部のマスコミが『サンデー毎日』同様、裏付け取材もしないまま、一方的に報道している点だ。
 あたかも『サンデー毎日』の記事が正しいものという前提に立って裏付け取材を十分にしないまま記事にする。これはジャーナリストとして自殺行為というべきでないか。
 マスコミ関係者はこういう。
「毎日新聞の経営危機説は今に始まったことではないが、『サンデー毎日』も苦戦している。だが、宗教問題をやれば一時的に部数が伸びるので、いわばカンフル剤として時々、取り上げる。いうならばマスコミの霊感商法というところですな。しかも聞くところによれば、『サンデー毎日』は、締め切り直前にコスモメイト側にFAXでの申し込みを一方的にしただけで、十分な取材をしないまま記事にしたそうじゃないですか。FAXで一方的に取材申し込みするという手法は、『取材、申し込みした』という悪質な“アリバイ工作”にすぎません」
 実際、ある新聞者の幹部は、
「同業者の批判は好まないが、木曜日の夜にFAXに取材を申し込みをし、金曜の夕刻まで回答がなければノーコメントとするというのは、正常な取材方法とはいいかねる」といっている。
『サンデー毎日』の窮状は察するが、それにしても、無批判に権力闘争の一方の当事者に誌面を提供したとの誹りは免れないだろう。




またまたお粗末、「特集第2段」

これに続く「激震スクープ!第2弾――コスモメイト、深見青山教祖がビデオで“告白”した愛人斡旋と隠し財産のカラクリ」(4月25日号)の記事も、これまた一方的な情報による事実無根と事実誤認によって構成されている。記事は冒頭、次のような自画自賛で始まる。<宗教団体『コスモメイト』の深見青山教祖によりセクハラ、暴力、霊視商法などを暴いた本紙先週号は、販売直後から編集部に全国各地の信者から怒りや不信の電話が殺到するなど反響をよんだ>
その後、関西と東京の信者の怒りや不信の“声”を紹介した上で、記事はこう続く。
「それに引き換え、コスモメイト側からは四月十日現在、抗議、説明は一切ない」
 ところが、コスモメイト側の言い分はまったくちがっている。
「確かに、記事で中傷された内容について、『サンデー毎日』側に一切説明していません。最初から一方的な情報をもとに、悪意を持って記事をかいていることがわかっているのですから。しかも、『サンデー毎日』はこちらに取材に来ていないのですよ。取材にも来ないで、『コスモメイト側から説明がない』と書かれているのは心外です。取材にも来ないで、よくこれだけ事実無根、事実誤認の記事が書けるものです。正直、驚いています」(広報室)




人の良い宗教指導者

「サンデー毎日」による一連のコスモメイト批判・攻撃がどこまで真実を伝えているのか強い関心を抱いた取材スタッフは、コスモメイトのスタッフと渦中の人物である深見青山氏に取材を試みた。取材スタッフはこれまで、多くの宗教家や宗教を看板に悪質な“カネもうけ”に走っている人物などを見てきた。深見氏もそうした取材対象の一人と考えていたが、会見して得た印象は、宗教者にありがちな浮世離れしたところはあるが、人間はすべて善人とする「性善説」に立脚した人生観の持ち主だと見受けられた。
 また、長時間の会話の中で観察した範囲でいえば、氏その人は、『サンデー毎日』が書いているような悪人でも詐欺師でもない。コスモメイト攻撃の仕掛け人であるX氏と比較すれば。裏表のない人間性で、むしろ人が良すぎる宗教指導者というのが偽らざる印象である。
 深見氏に比べ、X氏は宗教者というよりは己の栄達を目指す野心家で、権謀術数を駆使する“策士”であり、悪い意味での“政治的人間”の代表ともいうべきタイプの人間であることが次第に浮かび上がってきた。
 今回の『サンデー毎日』のコスモメイト批判・攻撃の仕掛け人であるX氏が、コスモメイトグループ内部で、@どのような画策をしてきたのかAなぜX氏はコスモメイトを辞めたのかBその経歴と正体――については、次号で詳細に伝える。
(以下次号)
<まとういさみと特別取材班>



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