信仰とは何だろう。同じ価値観、世界観をもった者同士が集まった教団で、あろうことか“セクハラ騒ぎ”が起きていた。騒動に見え隠れする暗闘の全貌を!


 昨年12月、ある宗教団体を巡るセクハラ事件のてん末が報道された。全国紙では『毎日新聞』がベタ記事、スポーツ誌も同様の扱いであったが、ローカル誌の『神奈川新聞』のみが四段ぶち抜きの大報道を展開し、注目を集めた。一連の報道などによれば、事件の概要は次のとおり。
 「宗教団体コスモメイトの主宰者・深見青山氏が信者でスタッフの女性2人(28才と31才)に対しマッサージを命じた際、胸に触るなどの強引な行為に及んだ。そのため、昨年5月横浜地裁に告訴された」
「しかしコスモメイト側が請求額の1千万円を上回る1千百万円の慰謝料を支払うことで昨年12月2日、和解が成立」
「なお、このセクハラ事件を巡っては、教団の労働組合から地位保全の請求がなされ、和解金6千万円払って和解が成立している」……。
多くの人は宗教団体のもつウサン臭さを感じるはずだ。
過去、女性問題、金銭問題、後継者問題者など宗教団体のスキャンダル、トラブルが幾度も報じられてきたことから、
「コスモメイトよ、お前もか」というわけだ。
だが、一方、ある種の疑問が残ることに気づいた人もいるだろう。
なぜ、原告側が請求した慰謝料を上回る和解金を支払ったのだろうか。
セクハラ裁判を巡って地位保全を求める労働争議が起きたのはどうゆうわけなのか
これらの疑問点について、複数の宗教ジャーナリストに尋ねても、
「何やら、コスモメイトで内紛が起きた、とは聞いているが、はっきりしたことはわからない」
という答えばかり。
過去、幸福の科学、オウム真理教など急成長を遂げた教団は、必ずスキャンダルに襲われた。今回はどうなのか。




口外するなと裁判長が……

ところで、そもそもコスモメイトとはいかなる宗教団体なのだろか。新興宗教や霊能カ者関係の著作をもつ、宗教ジャーナリスト・松山博史はいう。
「深見氏は伊勢神宮や熊野大社、箱根神社などと懇意にしています。したがって教団は神道系ということになりますが、目指すのは、あらゆる宗派を超えた世界宗教。
コスモメイトという名の由来もそこらへんにあるのでしょう。ここ数年の間に急成長し、現在、会員(信者)数は公称4万人。全国100ヵ所近い支部があります」
月刊『文藝春秋』の93年1月号に「平成変革の50人」という特集が掲載された。政界からテレビのスターまで25分野の新しいリーダーを紹介したものだが、宗教界では、オウム心理教の麻原彰晃氏と深見氏の2人が選ばれた。その中で、島田裕巳・日本女子大助教授(宗教学)は次のように述べている。
「若い男女が楽しく過ごすサークルのような雰囲気」
「深見氏は45歳(注・現在42歳)まで、一切マスコミらに姿を出さないと宣言している」
「麻原氏のオウム真理致が反社会的存在とすれば、深見氏のコスモメイトは、社会と共存する存在」
「ただし、かつて巨大化した教団はみな反社会性を内包し、法難に遭わなかった例はない……」
比較的、いや極めて穏健であり、それゆえ、波乱含みの時代の中で成長を遂げてきた教団が、なぜセクハラや労働争議に巻き込まれたのか。その疑問を解くために、教団広報室にアプローチすると、「セクハラ事件に関しては、裁判長から、原告側、被告側ともにいっさい口外してならないと、固く口止めさているのです」
とはいうものの、現実にはマスコミ報道が流れてしまっている。もしコスモメイト側が、裁判長の命令を真摯に守っているというなら、原告側が情報を漏らしたとしか考えられない。とすればコスモメイト側も「真実」を明らかにしていいのではないか。
押し問答の末、深見青山師との面会の約束を取りつけることに成功した。
昨年12月23日。東京・九段会館。2千人近くの会員が集まった定例セミナーで、さわやかな笑顔を振り撤いていた深見師は、中肉中背で年齢のわりには白髪が目立つ。控室で一問一答を試みた。




▽まず、コスモメイトは何を目指しているのですか

深見 芸術、スポーツ、社会福祉は民族、宗教、国家を超えた共通言語です。この共通言語を活用し、世界の宗教と手を携え、混迷の世界を希望と秩序のある世界に立ち戻らせることを目指しています。それが神仕組み(神の御意志)ですから。コスモメイトでは日本ブラインド・ゴルフ(盲人ゴルフ)協会を設立しましたが、これはスボーツを通し障害者にも素晴しい人生を歩んでもらいたいという願いからです。

 

▽今回のセクハラ事件の真相をズバリうかがいます。

深見 真相といっても、何もないですからね。私には24時間、2人の秘書がついているから、女性と密室にこもるなんてことはあり得ない。また布教のため国内外を飛び回っているから、住所不定みたいなもんでね(笑)。

心やましき者に逆手を!

 

▽原告の請求額を上回る和解金を払った理由は。

深見 和解金ではなく解決金です。
これは裁判長の判断で調書(裁判における判決文)に明記されています。原告の請求金額は1千万円。それも、裁判に勝って初めて手に入れられるものです。しかし、裁判となれば、原告側の主張がすべてくつがえされ、一銭も手に入れることができなくなってしまう。何しろ原告側には、20人近い弁護士がついてるんですから、その裁判費用だって大変です。だから、不毛な裁判などやめて、新しい人生を送ってほしいという意味を込めての、解決金なのです。

 

▽労働争議との絡みは。

深見 身内の恥をいいたくなのですが、コスモメイトの有力幹部が分派活動をしていて、それが発覚。辞職させられたことへの、意趣返しとして、ありもしない不当労働行為やらセクハラを持ちだしたのです。それに対して、私は宗教家として対応するしかありませんからね。

 

▽今回のことでどう反省していますか。

深見 金、女性関係、後継者問題は、宗致家のタブーとしていまして、つねづね自らも戒め、幹部たちにも伝えてきたのですが、心やましき者に逆手にとられてしまったのは、私の未熟さの故でしょう。しかし、心やましき者を救うのも宗教者の仕事ですからねえ。

信仰は信仰以外の何物でもない。信仰を利用する心やましき者は、現世の塵芥にまみれるたけ。今回の事件はコスモメイトに降りかかった初の法難ということなのだろう。



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